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Journal
2025.07.30
超高力ボルト(スーパーハイテンションボルト)の動向と活用例
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近年、建築物の大規模化・高層化、ならびに耐震性能への要求の高度化に伴い、「SHTB」を代表とする超高力ボルト(スーパーハイテンションボルト)の使用が増えてきています。
SHTB | JISには現時点で未制定 (2025年時点) |
引張強さ 1400N/mm2 (F10Tの1.5倍) |
高層ビル、スタジアム、橋梁など |
---|---|---|---|
F11T | JIS B 1186 | 引張強さ 1100N/mm2 |
F10Tよりも一段階強い張力性能 |
各メーカーが製造するSHTBは、個別に(一社)日本建築センター(BCJ)などの技術評価を取得しており、その性能や適用範囲が評価書に明記されています。現時点(2025年)では、プロジェクトごとの特記仕様書で超高力ボルトの使用を指定されることが多いです。
F11Tは、JIS B 1186の中で規定されている11T等級の摩擦接合用ボルトで、名称の通りF10Tよりも一段階強い張力性能を持ちます。引張荷重に対する安全率を高められるほか、接合部に必要な本数を削減できるというメリットがあります。
金メッキを施したSHTB
なぜ「超高力ボルト」が増えているのか?
① 構造物の大型化・高層化
都市部の再開発や超高層マンション・オフィスビルの需要増加により、より高強度な接合材が必要とされてきました。従来のF10Tでは対応しきれない応力や地震時の変形への対策として、SHTBやF11Tの使用が進んでいます。
② ボルト本数削減による施工合理化
F11Tを採用することで、同じ面積・応力条件下でも使用するボルトの本数を減らせるため、孔あけ作業や締付け工程が軽減され、施工効率が向上します。
③ 建設資材の省力化・省スペース化
部材の集約化・軽量化により、現場作業者の負担軽減や足場設置スペースの削減にもつながり、安全性向上に寄与するケースもあります。
超高力ボルト使用時の注意点
注意点 | 内容 |
---|---|
材料管理 | SHTBやF11Tは特殊鋼材が用いられることが多く、熱処理や表面処理の管理がシビアです。ロット管理が特に重要です。 |
部材設計との整合性 | 高強度ゆえに、母材や座金側の変形・座屈を誘発しないように設計段階での確認が必須です。 |
締付け管理 | より大きな締付けトルクが必要となるため、トルクレンチや施工工具の能力にも注意が必要です。 |
コスト面 | 現時点ではF10Tに比べて製品単価がやや高めであることが多く、使用目的を明確にしたうえでの採用が求められます。 |
現場での採用事例(傾向)
- ・ 超高層オフィスビルのコア部接合部材
- ・ 大規模スタジアムやアリーナの耐震・制振構造
- ・ 鋼橋の主構部接合部(リプレース工事含む)
補足まとめ:F10T/S10T/F11T/SHTBの使い分けイメージ
用途 | 推奨ボルト |
---|---|
一般建築、倉庫、低層施設 | S10T(施工性重視) |
中高層ビル、耐震補強 | F10T(精度・信頼性重視) |
超高層ビル、大規模橋梁、特殊構造 | SHTB、F11T(高強度・合理化) |
第一ボールト株式会社では、今後も建設現場の実情に寄り添いながら、確かな製品と技術情報を提供してまいります。ご質問や製品に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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