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建設現場で進むめっき仕様の変化
建設現場で使用されるボルトや金物には、長期間にわたって安定した耐食性能が求められます。従来、その代表格として広く使用されてきたのが「溶融亜鉛めっき」です。厚いめっき皮膜を持ち、過酷な環境下でも信頼性の高い防錆性能を発揮してきました。
しかし近年、特に国や地方自治体が発注する「公共工事」を中心に、新たな表面処理技術への移行が進んでいます。その代表的なものが「SGめっき」と呼ばれる高耐食性合金めっきです。
(詳しくはこちら(株式会社興和工業所ウェブサイト)をご覧ください。)
本記事では、SGめっきの基本的な仕組みから、従来の溶融亜鉛めっきとの比較、そして採用が進む理由までを詳しく解説します。
SGめっきとは?その構造と特長
SGめっきとは、アルミニウム5%、マグネシウム1%を添加した亜鉛浴でめっきされた溶融めっきのことで、「溶融亜鉛アルミニウム合金めっき(JIS H 8643)」の名称としても認識されています。国土交通省・新技術情報提供システム(NETIS)には、SGめっきSPという名称で登録されています。
【SGめっきの特長と選定ポイント】
● 高い耐食性
亜鉛の犠牲防食作用に加え、アルミニウムとマグネシウムを添加することで、塩水噴霧試験における赤錆発生時間が大幅に延長され、溶融亜鉛めっきの10倍以上の耐食性能を発揮します。
● 経済性に優れる
亜鉛めっきと比較して長期間の耐食性が期待できるため、メンテナンスフリーとなり、ライフサイクルコストの点から、経済的に長期防錆を維持することができます。
● 環境に優しい
鉛やカドミウムなどの有害物質を含まず、RoHS指令にも適合しています。
● 塗装下地として優れる
化成処理性が良好で、塗膜との密着性も高いため、塗装下地として優れています。
なぜ今、SGめっきが選ばれるのか?
● 公共工事での規格化と推奨
溶融亜鉛アルミニウム合金めっき(SGめっき)がJIS H 8643に認証されました。国土交通省の仕様書などでは、SGめっきに類する耐食性の高いめっき処理が「耐食性合金めっき」として扱われるケースが増えています。 特に、省資源、省エネルギーの観点からインフラの長寿命化が求められる現在、SGめっきのような表面処理が注目されるのは自然な流れと言えるでしょう。
● SDGs・脱炭素の観点から
従来の亜鉛めっきでは得られない高い防食効果により、ライフサイクルの延長やメンテナンス回数の削減にも寄与しています。こうした特徴が「環境配慮型設計」として評価されつつあります。
溶融亜鉛めっきとの違いを比較
|
比較項目 |
溶融亜鉛めっき |
SGめっき |
| めっき厚 | 35μm以上(規格:HDZT 35) | 25μm以上(規格:HZA 25A) |
| 耐食性能 | ○ | ◎ |
| 寸法安定性(ねじ) | ✕ | △ |
| 美観性 | ✕ | ○ |
| コスト感 | ○ | △ |
| 環境負荷・省エネ性 | ✕ | ○ |
SGめっきは初期コストがやや高めに感じられることもありますが、長期的なライフサイクルコストや維持管理費用を考慮すれば、トータルコストは決して高くありません。
採用事例と設計指針
採用事例(一部)
● 海岸沿いの防潮堤や橋脚の補修工事
● 道路や鉄道関連の都市インフラ・建築大都市圏での立体駐車場や再開発ビル
● 空港関連施設などの高湿度・高塩害環境
SGめっきの仕様は、高速道路の「標準仕様書」においても明記されることが増えており、設計段階からめっきの種類を明確に指定することが重要になってきています。
ねじの嵌合性に優れるKSGめっきとは
KSGめっき(溶融亜鉛スズ合金めっき)は、流動性の良いスズの特長を活かし、可動部のある仮設機材やセムスボルトなど溶融亜鉛めっきでは対応が難しかった製品への対応を可能にした表面処理です。(興和工業所独自で開発された表面処理技術です。詳しくはこちら(株式会社興和工業所ウェブサイト)をご覧ください。
【KSGめっきの特長と選定ポイント】
● 嵌合、可動性
めっきのつき周りが良く、ネジの嵌合に優れ、可動部のある製品に適しています。
● 犠牲防食作用
亜鉛による犠牲防食作用があり、めっき皮膜がキズ付いてもサビが発生しにくいです。
● 環境に優しい
鉛・カドミウム・クロム等の環境負荷物質をほとんど含みません。特に食物を運送する際に利用されるパレットなどには最適な表面処理技術です。
第一ボールトの対応と今後の展望

第一ボールトでは、こうした市場のニーズに対応すべく、SGめっき仕様の高力ボルト、ファスナー類の在庫対応を順次強化しています。 特に、太陽光架台や胴縁用ボルトである「KY-スピードボルト」にもKSGめっきを採用し、耐食性を求められる現場や公共工事において使用されています。
今後も、設計段階からめっき仕様にこだわるお客様へ、最適な選定・技術サポートを提供してまいります。