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2026.01.25
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ー 金属ねじでは対応できない現場課題をどう解決するか ー

設計や施工に携わる中で、「本当は金属ねじを使いたくないが、代替手段がない

そんな場面に直面したことはないでしょうか。

腐食環境、電食、軽量化、非磁性、薬品耐性、絶縁性…。
要求性能が高度化するにつれ、金属ねじが必ずしも最適解にならないケースは確実に増えています。

そこで近年注目されているのが、スーパーエンジニアリングプラスチック製の特殊ねじ

中でもPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)を材料としたねじです。

なぜ「樹脂ねじ」ではなく「PEEKねじ」なのか

一般的な樹脂ねじ(ナイロン、POMなど)は、「軽い」「錆びない」といったメリットがある一方で、
強度・耐熱性、耐薬品性の点で用途が限定されがちです。

これに対し、PEEKはスーパーエンジニアリングプラスチックに分類され、以下のような特徴を持ちます。

・ 連続使用温度が約250°C

・ 高い機械強度と耐疲労性

・ 優れた耐薬品性(酸・アルカリ・溶剤)

・ 非磁性・電気絶縁性

・ 吸水率が極めて低く寸法安定性が高い

つまりPEEKは、これまでの樹脂の機能性を大きく向上させた材料です。

金属ねじの代替として、
初めて検討対象に上がるレベルの樹脂材料と言ってよいでしょう。

設計現場でPEEK製特殊ねじが選ばれる理由

① 電食・腐食トラブルを根本的に防げる

異種金属接触による電食や、薬品雰囲気下での腐食トラブルは、
設計段階では見落とされがちですが、後々大きな問題になります。

PEEKは金属ではないため、

電食が発生しない

塩害・薬品環境でも腐食しない

といった点で、長期信頼性の担保につながります。

② 軽量化と部品点数削減につながる

PEEKは比重が約1.3と軽量です。
多数のねじを使用する装置や可動部では、

全体重量の低減

慣性力の低下

組立負荷の軽減

といった副次効果も得られます。

「ねじ一本くらい…」と思われがちですが、
積み重なると設計思想そのものが変わるケースもあります。

③ 非磁性・絶縁が必須な装置に使える

医療機器、半導体製造装置、検査機器など、磁場や電気特性の影響を嫌う分野では、
金属ねじそのものがリスクになります。

PEEK製ねじであれば、

磁場の影響を与えない

電気的に絶縁できる

という点で、設計制約を大きく緩和できます。

「金属ねじより弱い」は本当か?

ここは正直に触れておくべきポイントです。

PEEKねじは、同サイズの金属ねじと単純比較すれば強度は劣ります。

しかし重要なのは、

・ 必要十分な締結力か

・ そもそも過剰な強度設計になっていないか

という視点です。

実際の現場では、

・ 強度は足りているのに腐食した

・ 電食で早期破損した

・ 絶縁が必要だった

といった理由で、金属ねじが問題を起こすケースも少なくありません。

PEEKねじは「万能な代替品」ではなく、条件が合えば圧倒的に合理的な選択肢です。

設計段階で判断が変わった「想定事例」3選

PEEKねじは、「最初からPEEKありき」で採用されることは多くありません。

実際には多くの現場で、
金属ねじを前提に設計 → どこかで違和感や問題が発生 → 代替案としてPEEKが浮上

という流れを辿ります。

ここでは、設計・施工現場で起こりがちなケースをもとに、
金属ねじからPEEKねじへ設計変更した想定事例を紹介します。

想定事例① 化学薬品を扱う装置内での「想定外の腐食」

▶ 初期設計

 ・ 使用ねじ:SUS304 六角穴付ボルト

 ・ 使用環境:薬品洗浄工程を含む装置内部

 ・ 想定:ステンレスなので問題なし

▶ 発生した問題

 ・ 使用開始から1~2年でねじ表面に腐食兆候

 ・ 定期点検時に固着が発生

 ・ 交換作業に想定以上の工数が発生

  高い耐食性を持つ金属材料(SUS316(SUS316L)やチタン)へグレードアップを検討。

  しかし、耐食原因を調査すると、薬品ミストと温度条件の組み合わせにより、
  SUSでも耐えきれない環境であったことが判明。

▶ PEEKねじへの変更判断

 ・ 腐食しない材料が必須

 ・ 強度はそこまで必要ない(保持目的)

 ・ メンテナンス性を重視

  → PEEK製特殊ねじへ設計変更

▶ 結果(想定)

 ・ 腐食・固着が発生しない

 ・ 定期点検時の作業時間が大幅に短縮

 ・ 交換頻度が下がり、トータルコストが低減

  → 「強度」ではなく環境耐性を最優先したことで、結果的に設備寿命そのものが安定。

想定事例② 異種金属接触による電食トラブル

▶ 初期設計

 ・ 被締結材:アルミフレーム

 ・ 使用ねじ:三価クロメート処理鋼製ねじ

 ・ 使用環境:屋内だが湿度変動あり

▶ 発生した問題

 ・ 数ヶ月〜1年程度でアルミ側に腐食進行

 ・ ボルト周辺のみ腐食が集中

 ・ 外観不良としてクレーム懸念が浮上

  典型的な異種金属接触による電食

▶ PEEKねじへの変更判断

 ・ 強度要求は中程度

 ・ 電食の根本対策が必要

 ・ 樹脂ワッシャ追加では不十分

  → 金属ねじそのものを非金属化

▶ 結果(想定)

 ・ 電食が発生しない

 ・ 外観品質が安定

 ・ アルミ部材側の設計寿命が向上

  → 「絶縁材を足す」よりも、ねじ自体を変える方が合理的だったケース。

想定事例③ 非磁性が求められる検査装置内部

▶ 初期設計

 ・ 使用ねじ:SUS316

 ・ 理由:非磁性とされているため

 ・ 装置:磁場の影響を嫌う測定器

▶ 発生した問題

 ・ 組立後、測定誤差が発生

 ・ 原因切り分けの結果、ねじ部の微弱磁性が影響

  SUS316であっても、加工硬化などにより完全な非磁性とは言えない場合があります。

▶ PEEKねじへの変更判断

 ・ 確実な非磁性が必要

 ・ 熱や薬品条件は問題なし

 ・ 強度は締結保持レベルで十分

  → PEEK製ねじに変更

▶ 結果(想定)

 ・ 測定誤差が解消

 ・ 再設計・再検証工数が削減

 ・ 装置の信頼性が向上

  → 「ほぼ大丈夫」では許されない分野では、材料そのものの性質が武器になります。

PEEKねじは「逃げ」ではなく「設計判断」

 

金属ねじからPEEKねじへの変更は、コストダウンや代替品対応ではありません。

むしろ、

・ トラブルを予測し

・ 長期安定を選び

・ 現場負荷を下げる

設計力そのものが問われる判断です。

第一ボールト株式会社では、こうした想定事例をもとに、選定相談・図面ベース検討に対応しています。

「変更すべきかどうか分からない」その段階こそ、一番価値があります。

 

※参考:PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製品情報